20051208 第四回学術大会印象記

平成17年12月8日

日本放射線安全管理学会会員 各位

広報委員会委員長 森 厚文

 先に京都大学を会場として開催いたしました「日本放射線安全管理学会第4回学術大会」に関しまして,広島大学の中島 覚先生に印象記をご執筆いただきました。
 以下にご紹介させていただきます。


第四回学術大会印象記

広島大学自然科学研究支援開発センター
中 島  覚 

 「鴨の流れに映る、あなたの姿・・・」(かぐや姫)と口ずさんでしまう世代にとって京都はたまらない街であるが、平成17年11月23日〜25日、京都大学百周年時計台記念館にて日本放射線安全管理学会第四回学術大会が開催された。季節柄紅葉が奇麗な観光シーズン真っ盛りであり、大学祭も開催されていたため、学会を迎える緊張感とともに華やいだ雰囲気が感じられた。

 発表件数は108件(口頭発表69件、ポスター発表39件)と過去最高であり、さらに3つのシンポジウム、特別講演、受賞講演を合わせると129件の発表となり、大変充実した大会であった。特に、放射線安全管理学関係で学位を取られた方も出たとのことであり、この学問の色々な領域でレベルの高い研究が出始めている印象を持った。


 特別講演は2題あり、一つは西谷 弘氏(徳島大学)の「医療被ばくの現状」、もう一つは保田浩志氏(放射線医学総合研究所)の「航空機搭乗時の宇宙線被ばくについて」であり、どちらも被ばくに関係している。医療被ばくには線量限度が定められていないが、これは治療等のはっきりした利益があるからである。しかしながら、医師は線量に無関心な場合がある、あるいは正確な線量測定が行われていない場合がある等の説明が、先生の水虫治療等の例を挙げて説明された。航空機搭乗時の被ばくに関しても、現在色々な所で話題に上るが、欧州連合では航空機乗務員の被ばく管理が実施されているようである。日本ではこの問題が文部科学省において審議されているところである。医療被ばくに関しては、勿論現在でも放射線安全管理のプロが貢献しているが、さらに積極的に貢献できる所と考えるし、航空機搭乗時の被ばくに関しても放射線安全管理のプロが開拓すべき魅力ある領域と考える。

 シンポジウムは、「食品照射」、「ライフサイエンス」、「法改正」の3件について行われた。それぞれのテーマに関して、色々な観点からの講演者で構成されており、企画された先生方の思いを感じた。その結果、多角的にそれぞれのテーマについて勉強することが出来た。「食品照射」では、専門家が考えていることと、一般人が感じていることとのギャップを埋めることの重要性を感じた。これは、「法改正」の一部(管理区域外での下限数量以下の放射性同位元素の取扱い)とも関係することであり、放射線安全管理学会の取り扱うべき重要なテーマであると考える。「ライフサイエンス」に関しては専門ではないが、それでもバイスタンダー効果等大変興味深いお話を伺った。

 口頭発表も、医療被ばく、環境測定・線源取扱、放射線計測・電磁波影響、放射線照射利用、汚染対策・汚染検査、イメージングプレート、管理測定・線量評価、作業環境測定、ソフトウェア・システム構築、放射線教育、被ばく低減・安全管理と多岐に渡っていた。同様にポスター発表でも色々な領域からの発表があった。このように、放射線安全管理学では日常業務での様々な工夫を取掛かりとして、より一般的、普遍的な知識へと引き上げて行くことの重要性を改めて感じた。本学会の内容は一部、日本アイソトープ協会主任者年次大会と重なる部分があるが、今後、両者の棲み分けを考える必要もあろう。活発になったとはいえ、まだ必ずしも認知された訳ではなく、会員の益々の努力によりレベルの高い研究を進めるとともに、放射線安全管理を高いレベルで行える人材の育成に努めることが重要である。

 日本のどこの街とも一線を画している京都にて、凛とした学会であった。受付、クローク、会場設営等すべての仕事で、それぞれの分担者が気持ち良く対応しており、五十棲実行委員長をはじめとする京都大学のメンバーに大変感謝する。