20031226 日本放射線安全管理学会第2回学術大会の印象記
 先に開催しました「第2回学術大会」にご参加いただきました宇田達彦先生(核融合科学研究所)に、「印象記」をご執筆いただきました。 以下にご紹介させていただきます。
広報委員会
第2回学術大会の印象記
 平成15年12月3日から5日にかけて、つくば市研究交流センターにおいて日本放射線安全管理学会第2回学術大会が開催されました。今回、参加者219名を得て成功裏に大会を終えられたことに、加藤和明大会実行委員長ほか実行委員やプログラム委員などの多くの方々のご尽力によるものと敬意と感謝の意を表します。大会では、研究の口頭発表35件、ポスター発表45件があった他、シンポジウム「国際免除レベルの法令へ取り入れ等について」が企画され、はじめに基調講演として文部科学省放射線規制室からその基本的な考え方について詳細かつ解りやすい説明がなされました。また、加藤大会実行委員長自ら、特別講演をされ、放射線管理における情報処理、例えば計測値とそのゆらぎや曖昧さと判定について、有意義な話を伺うことができました。以下に、この学術大会での印象と今後の発展に向けた感想を述べます。
 大会も第2回目となり、全体を通して活発な議論がなされ、前回にも増して学会の雰囲気が出てきたようですし、大会の進め方にあっても、十分な備えと配慮がされていたと思います。個々の発表内容に触れることはいたしませんが、放射線安全管理学も分野は広く、放射線管理技術・システム、放射線測定、線量評価、廃棄物管理、安全評価、教育、法規制などの技術分類と、原子力施設、大学研究機関、医療機関など実施機関別に分けられます。このような縦糸と横糸の関係が理解されて共通認識が生まれるとさらに議論が深まると感じました。滑り出しから内容が解らない、図表が読めないではあとの議論が困難と成ります。学会ではその道の最先端の成果を発表し議論するので、専門外の人には理解困難な点があるのは致し方ないとしても、発表の導入部では、研究の背景、動機、目的が明確に述べられるべきで、そのような配慮がなされていたかを思い直す必要があると思います。新しい学会ですので、皆さんが配慮すればさらに議論も内容も深まるのではないでしょうか。
 新しい放射線安全管理学として、1つの学問体系を組み立てていくには、放射線安全管理をする人が、日々の、管理に没入するのではなく、問題意識を持ち管理の重要性を前面に押し出すことに力を入れる必要があると思います。安全管理については、最近の重大な事故を通して、事故を起こした担当者ではなく経営者の管理監督責任が問われるようになってきました。そのとき、安全管理担当者の責任は余り問われていません。そのことは、職制上の業務管理が重視され、安全管理担当者の存在が忘れられていないでしょうか。もしかして、違反は安全管理担当者の影に隠れて行われてはいないでしょうか。真偽の程は分かりませんが、こうした傾向が反省され、社会的にも安全管理の重要性が認識されつつあると思います。
 学会にあっても、こうした重要性が反映されるべきで、単に測定した、計算した、管理してます、ではなく、そこで工夫し、システムとしてまとめ、高度化したなどの新しさを前面に出していく努力が必要と感じます。人の言うことを聞かない者がいるとか、違反行為が絶えないというような話は論外ですし、学会本来の話題でもないでしょう。しかし、現実は難しいことが多い、だからそうした土壌を変えていく努力が必要で、そこにもこの学会の存在意義があるのではないかと感じます。
 次回は、さらに多くの発表がなされ、分科会、ポスター、シンポジウムなどを通した盛り上がりのあることを期待します。
[記:宇田達彦]